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2015.3.04

許すのか?こんな首相答弁 

2015/3/4 朝刊

 開会中の通常国会は安全保障や労働者保護をめぐる論議など、重要案件がめじろ押しだ。しかし、安倍晋三首相の答弁にはしばしば首をかしげざるを得ない。過去にも「(原発の)全電源喪失は起こり得ない」(2006年)などの発言があったが、疑問符付き答弁は加速している感がある。国民的議論がわき起こらないのも不思議だ。問題をはらむ発言の数々を類型化するとともに、現在の政治状況について識者らに聞いた。

◆1◆ 二枚舌 地元“無視”

 同じ問題についての答弁や言動が明らかに矛盾しているケースがある。

 原発再稼働をめぐり、首相は二月十七日の参院本会議で、原子力規制委員会が新規制基準に適合すると認めた原発については「地元の理解を得ながら再稼働を進めていく」と答えた。

 ただ福島県は、事故が起きた東京電力福島第一原発だけでなく同第二原発も含めた県内全基の廃炉を求めている。先の答弁に先立つ一月三十日の衆院予算委で、この点をただした高橋千鶴子議員(共産)の質問に対し、首相は「(廃炉は)事業者が判断を行うもの」と地元の意向を後回しにした。

 沖縄県の米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設についても同様だ。首相は二月十二日の施政方針演説などで、「沖縄の方々の理解を得る努力を続けながら、移設を進める」と述べた。

 だが、現状は「努力」とはほど遠い姿が目立つ。移設反対を掲げ、昨年十一月の沖縄県知事選で当選した翁長(おなが)雄志氏は基地問題に関する要望で再三、上京したものの、首相は新知事との面会を事実上拒否した。辺野古の海上で抗議活動を続ける市民らに対し、海上保安庁は拘束を含め強硬姿勢で臨んでいる。那覇市議会が二月、「過剰警備」をやめるよう意見書を可決したほどだ。

◆2◆ 声荒らげ論点回避

 過激派組織「イスラム国」(IS=Islamic State)による日本人人質事件では、首相の中東歴訪中の演説がIS側に「挑発」と受け取られた可能性が問題となった。

 二月三日の参院予算委で小池晃議員(共産)に、この点を指摘された首相は「まるでISIL(IS)を批判してはならないような印象を受ける」と声を荒らげ、論点を回避した。

 その後、同月十九日の衆院予算委で岡田克也議員(民主党代表)は、首相と菅義偉(すがよしひで)官房長官がともに昨年末の衆院選期間中、官邸から離れたことを危機管理の観点からただした。首相はこれに対し、「民主党にそんなことが言えるのか」と答弁。

 望月義夫環境相と上川陽子法相の献金問題でも「民主党政権時代にも外国人献金が随分問題になり、二人の首相が関わった」(二十七日の衆院予算委)と質問をはぐらかした。

 首相の姿勢を問題視した今井雅人議員(維新)の質問(二十五日)には「民主党の例を挙げるのはある意味で敬意を表しているから」と述べた。

◆3◆ 公約もけむに巻き

 首相は一二年の民主党政権時代、当時首相だった野田佳彦氏と、消費税増税導入と引き換えに国会議員の定数削減に取り組むことを約束。一三年の通常国会末までに結論を出すと、一二年の衆院選で公約に盛り込んだ。

 しかし、約束は果たされないまま、昨年末に衆院選が実施された。一月三十日の衆院予算委で、重徳和彦議員(維新)の追及に対し、首相は「定数削減に取り組むのは国民との約束だ。ただ、定数削減をしなければ、選挙はしないと約束したことは一回もない」とけむに巻いた。

 格差をめぐる民主党の岡田議員とのやりとりで、首相は「格差はおおむね横ばいで推移」(二月十六日の衆院本会議)と答えた。

 判断の根拠は、所得の分布を測る指数「ジニ係数」だ。働いて得た所得を元に考えると、格差の拡大傾向が出ているが、税金や社会保障給付といった所得の再配分を加算すると、横ばいの傾向がうかがえる。

 しかし、この数字からは正社員と非正規の割合が分からない。バブル的に非正規の仕事が増え、失業者が減った時にもジニ係数は改善され、実際の格差が見えにくい。だが、現実には非正規で働く人びとの割合が増えている点こそ、格差の拡大として問題視されている。

◆4◆ 解釈 ご都合主義?

 「憲法解釈上、(徴兵制は)苦役に匹敵する。憲法違反になる」

 二月十九日の衆院予算委で、首相は徴兵制導入をこう否定したが、説得力に欠けた。首相自身が「憲法解釈上の憲法違反」をどこまで重く受け止めているかが見えないからだ。

 それというのも、安倍政権は昨年七月、歴代政権が継承してきた憲法解釈を変更し、閣議決定という形で集団的自衛権の行使容認にかじを切った。一内閣の一存で解釈が変わる前例をつくった。これを踏まえると、徴兵制は現時点で違憲でも、後々になって解釈が変わる可能性があることは容易に想像できる。

 質問した民主党の岡田議員も「『徴兵制は憲法違反』という解釈を変える内閣が出てこない保証がどこにあるのか」と批判した。

どうして国民的議論にならない? 

 首相のこうした答弁はひと昔前なら、大きな論議を呼んだはずだ。ところが、現状では国民的な議論にはなっていない。なぜか。

 自民党副総裁や幹事長を歴任した山崎拓氏は「戦後七十年、天下太平の世が続いた結果、人びとは政治への不満や危機感を感じることがなくなった。平和と安全が水や空気のようにただで手に入る日常の中で、政治への関心も失われているのでは」と指摘する。

 山崎氏は、安倍首相が二月二十日の衆院予算委で「日本教育会館から献金をもらっている議員が民主党にいる」と答弁し、二十三日に一転して「献金という事実はなかった」と訂正したことに注目する。

 「昔ならすぐに野党がクビを取りに来ただろうが、いまは野党の力が衰え、追及が弱い。メディアの報道も不十分。野党が政策を明示し、メディアも論評を強化しなくては」と語る。

 亀井静香衆院議員(無所属)も「昔は政治に対して怒れる若者たちがいたが、いまは不在。あきらめが広がっている」とみる。

 同氏も野党の追及の甘さを指摘する。「おかしい答弁があれば、野党は委員会を止めてでも何でも、追及しなきゃいけない。国会議員は首相や大臣に直接、問いただせる立場だ」

 コラムニストの小田嶋隆氏は「東日本大震災を境にして、国民が安定志向を強めたことが背景にあるように思える」と推測する。

 「関心は日々の生活のこと。防衛問題などは、すぐ自らに関係するとは思えないのだろう。経済への関心は強いが、日経平均などの数字を見ると、何となく良くなっているように思えてしまうのだろう」

 その上で「震災対応で混乱続きだった民主党政権への失望が強く、安定的に政権運営してほしい意識が今も強い。政治家の言葉に一喜一憂するより、震災で揺らいだ自分たちの社会がどうなっていくのか、一歩引いて考えているのではないか」と分析した。

(榊原崇仁、白名正和)

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