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2016.1.21⇒

<ポーランド・ドイツ訪問報告Ⅳ>
『原発政策 ~ドイツと日本のちがい 』

池住義憲/2016年1月15日
https://www.facebook.com/yoshinori.ikezumi

※前回報告Ⅱ&Ⅲ 2016.1.01⇒

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●ドイツの脱原発倫理委員会

 ☆10年以内に、原子力エネルギーの利用から撤退する
 ☆ドイツ社会はこの目標のため、必要な対策に取り組む義務がある
 ☆連邦議会は責任もってエネルギー大転換の目標を設定し、最大限の効果的政策を各州との連携で進める

 この三つ、2011年5月にドイツの「安全なエネルギー供給に関する倫理委員会」がメルケル首相に提出・提言した報告書の結論だ。第一次エネルギーは、3種類しかない。「化石燃料」(石油、石炭、天然ガス、シェールオイル、メタンハイドレード、オイルサンドなど)と、「再生可能エネルギー」(水力、風力、地熱、バイオマス、太陽光、太陽熱、潮力、波力など)、そして「原子力エネルギー」。
倫理委員会は、「原子力エネルギー」から「再生可能エネルギー」へ大転換する、大転換できる、と提言した。

 この委員会、311東日本大震災の翌月(2011年4月4日)、メルケル首相が設置したもの。原子力の利用を止めることの倫理的意義とそれに関する諸問題の検討、原子力と化石燃料に代わる代替エネルギーについての検討、そして将来のビジョンを描くこと。これが委員会の任務だ。

 委員は17名。委員長は政治家(元ドイツ環境大臣、元UNEP事務局長)と研究者の二人。あとは、大学教授、環境問題に取り組む人、教会関係者、企業並びに労組関係者など多分野から。その中には、原子力の専門家や電力会社関係の人は一人もいない。どのようなエネルギーが提供されるべきかは、電力会社ではなく、「社会が決めるべきだ」、という考え方が根底にあるから。安倍内閣が設置する各種の私的諮問会議や学識者懇談会などとの違いが、歴然!

 委員会は、設置後、約2ヵ月間集中して検討。そして2011年5月30日、メルケル首相に報告書を提出した。結論に至った委員会の基本的な考え方は、次の六つ。
  ①原発の安全性が高くても、事故は起こり得る
  ②原発は事故が起きると、他のどんなエネルギーよりも危険
  ③次の世代に廃棄物処理などを残すことは倫理的問題
  ④原子力より安全なエネルギー源が存在する
  ⑤地球温暖化問題があるので、化石燃料を代替として使うことは解決策ではない
  ⑥再生可能エネルギー普及とエネルギー効率化政策で、原子力を段階的にゼロにしていくことは、将来の経済のためにも大きなチャンス

 なるほど、納得! 大変明快です。こうすることは、現在と未来の「自然」と「人類」に対する責任だ、としている。

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●ドイツ原発政策の変遷・経緯

 私たちは、昨年11月14日、この委員会メンバーであるミランダ・シュラーズさんに会って直接話を聞くことができた。

 西ドイツが原発導入を決めたのは、1973年のオイルショック後。エネルギー安定供給のためだった。日本は、米国からの濃縮ウラン供与と対日原子力援助申出を受けて、1955年に原発導入を決定。最初の原発稼働は、ドイツが1975年、日本が1963年の東海村。

 東西冷戦の前線となっていた西ドイツでは、1970年代に反原子力運動と平和運動が結びつき、1980年代の「原発停止・平和推進・男女平等」をマニュフェストとする緑の党誕生へと繋がっていく。日本は、米国からの支援を受けて、岸・池田・佐藤・田中・三木・福田・大平内閣と続く自民党政権が、原発継続と拡大政策を踏襲。原発列島となった。

 ドイツのエネルギー政策に大きな影響を与えたのが、1986年4月のチェルノブイリ原発事故。1,000キロ離れたドイツにも、放射能が届く。市民とくに母親が子どもたちの健康を心配して立ち上がり、反原発・脱原発運動が浸透・拡大していく。市民が政府を、政治を突き動かした。これなしには、前進はない。

 エコロジー政党として1980年に再出発した小政党の緑の党は、チェルノブイリ事故後、議席を増やす。そして、1998~2005年の7年間、社会民主党(SPD)と連立政権を組む。その間の2000年、再生可能エネルギー法(EEG)を制定。シュレーダー首相は、当時17基あった原発を「2022年までに全廃する」と表明し、法で規定した。使用済み核燃料の処分場解決策が無かったことも大きな要因となった。

 一方の日本は、この頃、どうだったか。自民党政権(1999年以降は自公政権)は、1980年代後半から大々的に宣伝されたオール電化住宅に代表されるように、ガス・石油を室内で使用しないことが安全・クリーン・省エネであるとして、電力消費量が増大。安全神話は定着して原発は増加の一途を辿り、2005年に至るまで、13道県で計54基の原発が地震列島に点在することになっていった。

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●311東京電力福島第一原発事故後

 “日本のような技術の高い国でさえ
 こうした被害が起きてしまった。
 ドイツは昨年脱原発の時期を延長したが、
 考え直すべきだ”

 311東京電力福島第一原発事故直後、メルケル首相はこう述べた。福島事故の半年前(2010年秋)、メルケル首相は原発稼働期間を2034年まで延長することを決定していた。2000年にシュレーダー首相が再生可能エネルギー法を制定して「2022年までに原発を全廃する」としていたことを変更していた。しかし、福島原発事故後、メルケル首相はすぐに動き出し、元へ戻した。

 メルケル首相の動きは、早かった。福島原発事故から約3週間後の2011年4月4日、メルケル首相は「安全なエネルギー供給に関する倫理委員会」を設置。2ヵ月間集中して検討・議論を積み重ね、2011年5月30日に報告書を提出。報告書を受け取ったメルケル首相は、すぐ政策見直しに着手する。そして2011年6月6日、保守・革新にかかわりなく圧倒的多数で「2020年末までに全ての原発稼働停止」を閣議決定する。翌月には原子力法を改正し、法制化した。

 ドイツが原発を廃止しても、隣のオランダが国境近くに原発をつくる計画を打ち出し、フランスにも多くの原発があるから意味がない、との意見もある。温暖化対策にしても、ドイツは世界のCO2ガスの3%くらいしか排出していないから、ドイツが頑張っても他の国が削減しなければ意味がない、という議論もある。

 しかし、そういう考え方では何も変わらない。ドイツが自然エネルギーで成功していい例を見せる。新しい経済、新しい産業モデルを見せることができれば他国もそれを採り入れる、と考えているのだろう。

 福島原発事故から、5年経つ。現在は、どうか。事故後、メルケル政権は「原子力エネルギー」から「再生可能エネルギー」へ大転換した。原子力エネルギー利用は責任を負えないのだから、再生可能エネルギーに転換する。ドイツの脱原発倫理委員会が提案したものだ。これまでも進めてきたが、加速させた。リスクのもっとも小さな代替手段がある以上、そちらに転換するのは当然で、脱原発は可能だという考え方。これを政策にして実行に移した。

 「エネルギー大転換」政策のポイントは、簡単に言うと二つ。第一は、原子力を段階的・計画的に停止し同時に温室効果ガス排出も減らすため、「再生可能エネルギーの本格導入」と「省エネ」をセットで実施する。第二は、巨大発電所による集中型エネルギー供給から、エネルギー消費者自身がエネルギー生産者になって家庭用太陽光発電など「分散型エネルギー供給」に切り替える。電力の地産地消だ。

 ドイツの再生エネルギーは、2010年では17%以下であった。それが2012年には22%に。そして、2020年までに35%にする目標を立てている。こうすれば、原子力は必要ない。再生可能エネルギーのためには、インフラ整備が欠かせない。そのコストは、次世代への投資。国全体の経済発展を刺激する大きな要因にもなる。一時的に負担が増えても、次世代のことを考えて、ドイツは、舵を切った。

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●さて、日本は・・・

 日本は、「脱・脱原発」に舵を切った。逆回転だ。安倍政権は、2015年4月、新たなエネルギー基本計画で、原子力を重要なベースロード電源と位置づけた。安全性が確認できた原発から、順次、再稼働する、とした。原発回帰だ。これが、原発事故を起こした国が再出発する指針なのか。

 昨年8月に、九州電力川内原発が311後として初の再稼働。関西電力大飯原発と高浜原発、それに四国電力伊方原発も、再稼働へむけて準備を進めている。文科省は、福井県の高速増殖原型炉もんじゅの運転再開方針を変えていない。

 官邸と経済産業省と電力業界関係者が作ると、こうなる。電力消費者である各地域市民の意見が反映されないと、こうなる。ドイツでは、将来どのようなエネルギーにするかは電力会社ではなく、「社会が決めるべきだ」と考えられている。安倍政権とメルケル政権の違いは、歴然だ。

 関西電力大飯原発3、4号機の運転差止めを命じた2014年5月21日の「大飯原発差止訴訟」福井地裁判決(樋口秀明裁判長)では、「原子力発電所の稼働は経済活動の自由に属するものであって、憲法上の人格権の中核部分より劣位に置かれるべきもの」である、と裁定した。

 国と電力会社は、原発の再稼働が電力供給の安定とコストの低減につながる、と主張。これに対し福井地裁は、「多数の人の生存そのものに関わる権利と、電気代の高い低いの問題とを並べて論じるような議論に加わること自体、法的に許されない」とバッサリ!

 その通り。これは単なる「経済」の問題ではない。次世代・次々世代のいのち、暮らし、生存そのものに関する「倫理」の問題だ。そうした視座・視点を中心に据えて考えていくべき問題だ。

 メルケル首相は、2015年9月3日、日本政府に対し、「日本で原子力発電を段階的に廃止する」ことを求めるメッセージを送った。さらに続けて、「もっとも信じ難いリスクが発生する発生する可能性があります。だから私(メルケル首相)は他の人と2022年には最後の原子力発電所を配電網から削除することを決めました」と語った。

 日本では、福井地裁が原発運転仮差止めとした判決が、昨年12月下旬の異議審で取り消され、以前に戻ってしまった。大飯原発3号機は今月28日に再稼働、4号機も2月下旬の再稼働を目指している。

 私たちは、どうするか。原発事故から5年となる今年の3月11日、福井を中心とする住民3,000人超は、原告となって、関西電力を相手に原発運転差止め訴訟を提訴する。この裁判に注目し、支援しよう。

 私は今回のドイツへの旅で、確信と勇気を得た。前に紹介したドイツの脱原発倫理委員会の六つの結論のポイント、これを今一度私たちの社会でも確認し、脱原発へ向けて歩みを進めたい。以下に再録・共有して、本稿の最後としたい。

 ①原発の安全性が高くても、事故は起こり得る
 ②原発は事故が起きると、他のどんなエネルギーよりも危険
 ③次の世代に廃棄物処理などを残すことは倫理的問題
 ④原子力より安全なエネルギー源が存在する
 ⑤地球温暖化問題があるので、化石燃料を代替として使うことは解決策ではない
 ⑥再生可能エネルギー普及とエネルギー効率化政策で、原子力を段階的にゼロにしていくことは、将来の経済のためにも大きなチャンス

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以上

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