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2016.2.14⇒

「平和ブランド」の構築-コスタリカから

伊藤千尋(元朝日新聞サンパウロ支局長)

 同じ平和憲法を持っていても、コスタリカと日本はずいぶん違います。本当に軍隊をなくしたばかりか、平和を輸出しています。本当の積極的平和主義を展開して憲法を活かしているコスタリカの現状をお伝えしましょう。
 コスタリカの首都サンホセの目抜き通りを歩いていたら女性の警官が二人、街角に立っていました。「こんにちは」とあいさつしたあと、いきなり質問しました。「平和憲法を持っていても侵略されたらどうするんですか?」
 彼女は言いました。「軍隊を持ってしまうと、どうしても武力を使いたがります。それを避けるためにも軍隊を持たないことは素晴らしい事です。もし侵略されたらまず私たち警察隊が対応しますが、政治家が平和的に解決してくれると信じています」
              ※
 コスタリカは日本に次いで世界で2番目に平和憲法を持ちました。日本と違うのは、完全に自主的に制定したこと、条文どおり軍隊を廃止したこと、平和を広 めていることの3点です。侵略されたら大統領が国民に呼びかけて志願兵を募ることにしていますが66年間、必要ありませんでした。他国が侵略できない国造 りをしたからです。それは「平和ブランド」の構築です。
 なぜ、自主的に軍隊をなくしたのでしょうか。
 憲法制定の前の年に、選挙の不正をめぐって内戦が起きました。殺しあいはもう嫌だと考えました。もう一つは国家予算に占める軍事費の多さです。当時は予算の3割が軍事費でした。貧しい途上国なので国費を社会の発展に役立つ事に使おうと考えました。
 では、何にカネを使えば社会は発展するのでしょうか。国会で話し合った結論が教育です。「自分で考え自分で行動する自立した国民」を育んでこそ社会は発 展すると考え、軍事費をそっくりそのまま教育費にしました。「兵士の数だけ教師をつくろう」というスローガンを掲げて。
 では、軍隊なくしてどうやって平和を保ったのでしょうか。
 それは本当の「積極的平和主義」を外交政策としたからです。
 1980年、カラソ大統領は人類に「理解と寛容、平和共存」の精神を広めようと国連平和大学の創立を国連に提案しました。首都郊外の大学で今、日本を含む世界の学生が「平和になるにはどうしたらいいか」を学んでいます。
 1980年代、コスタリカの隣のニカラグアなど三つの国が内戦をしていました。米国はコスタリカに圧力をかけて米国が支援するニカラグアの右派ゲリラに 協力させようとしました。しかし、コスタリカのモンヘ大統領はきっぱりと断り「永世、積極的、非武装、中立」を宣言しました。超大国から自立した外交を進 めることを明確にしたのです。超大国にすり寄る日本と正反対です。
 次のアリアス大統領はこの3国に対話を説き、内戦を終わらせました。その功績で1987年、ノーベル平和賞を受賞しました。彼が進めたのは「平和の輸 出」です。平和憲法を持つ国は自分の国だけでなく、世界を平和にする責任があるという考えからです。うちの首相に聞かせてやりたい。
 アリアス氏は国連総会で演説しました。「私は武器を持たない国から来ました。私たちの国の子どもたちは戦車を見たことがありません。武装したヘリコプ ターや軍艦どころか銃でさえ見たことがありません」「私は、小国ながら民主主義の歴史を誇る国から来ました。私たちの国では男の子も女の子も、弾圧という ものを知りません」。
 僕は彼を日本に呼んだことがあります。朝日新聞の中で左遷されたときです。1995年、彼に朝日新聞が主催したシンポジウムのパネリストになってもらい ました。彼が壇上で語ったのは「私たちにとって最も良い防衛手段は、防衛手段を持たないことだ」という言葉です。名言ではありませんか。
 その後もコスタリカは1997年にはNGOと連携して国連に核兵器禁止モデル条約案を提出しました。2003年には世界で初めて「地雷ゼロの国」を宣言 しました。世界に平和を広め、今や国際社会でコスタリカといえば「平和の国」「平和を広める国」という評価を確立しています。
 いざというときの備えもしています。冒頭の警察官の言葉にもあるように、侵略されればまず警察そして国境警備隊で対応します。コスタリカの治安を守るの は警察が6500人、国境警備隊が3300人で合計9800人います。コスタリカにも現実には軍隊があると誤解している人がいますが、それは国境警備隊を 軍隊と誤認しているのです。
 たった9800人で国を守れるかという人もいるでしょう。しかし、コスタリカはいざとなったら全員が自国のために立ち上がります。守ろうと思うような国を創ってきたからです。
            ※
 地方の町を歩いていたら、向こうから制服を着た女の子が歩いてきました。女子高校生です。突然、質問してみました。「あなたの国に平和憲法があるのを知ってる?」
 「もちろんです」というので、重ねて聞きました。「侵略されたら、あなたは殺されるかもしれないよ。それでもいいの?」
 彼女は言いました。「平和のために尽くしてきたコスタリカを攻めるような国があれば、世界が放っておきません。私はこの国の歴代の政府が世界の平和に貢献してきたことを誇りに思っています。私は自分がコスタリカ人であることを誇りに思っています」

「世界一幸せな国」-コスタリカ

 昨年、英国のサイトが世界151の国の幸福度を発表しました。「世界で一番、幸福な国」にあげられたのがコスタリカです。
 この1月に僕がコスタリカを訪れたさいエコツアーをしましたが、ガイドは日本人の青年でした。コスタリカ女性と結婚してコスタリカに住んでいます。彼は 自分から「この国に住んで幸せだ」と言い出しました。「家族の間で人権について話し合うほどの人権先進国だし、病気になっても心配ないし、障害者があちこ ちで働く温かい社会だし。子どもの体調がよくないと職場で言えばすぐに早引けさせてくれる」と理由を挙げました。
 そう語ったあと彼は突然、ツアーのバスの運転手に「あなたは幸せですか」とたずねました。運転手はすぐに「もちろんだよ。なぜって軍隊がないし、私たち は平和を愛しているからね」と言いました。これがきっかけで、旅のあいだ、いろんな人にこの質問をぶつけました。だれもが「ええ、幸せです」と即座に答え たのには正直、僕も驚きました。
 最高裁判所の広報官は「もちろん幸せです。人生の目的を達成しているから。もちろん社会にはなお問題があり収入も高くはないけれど、この国の人生はシンプルでいろんなサービスも受けられるし好きなことをやれる」と話します。
 公教育省の女性職員グロリアさんは「ええ、私は幸せ。この国は貧しい中南米にあるのに早くから電気もついたし社会保障が完備している。高い社会保障費を 払っているけれど、その制度を担うのがコスタリカ人のアイデンティティだと思う。優れた制度をみんなで保っているという一体感がある。毎日、安定した生活 ができることを幸せと呼ぶなら、私はとても幸せです」と断言しました。
 単に幸せな社会にいるというだけでなく、幸せな社会を自分たちで創り上げて保っているという意識があります。
 現在のコスタリカ政府に批判的な人にも聞きました。大学教授のチャコン氏は「私は幸せです。人の温かさに触れたとき、そう感じる」と語りつつ、「ここ 30年ほど、米国流の新自由主義の経済が広まって少数の人だけ利益を受けるようになった。機会の平等が損なわれたら、国民は幸せじゃないと感じるようにな るだろう」と指摘しました。
 彼が言うように、今のコスタリカが何もかもそろった天国ではありません。コーヒーやバナナなどの農業とエコツアーなどの観光が主体の経済では、大きな収 入は得られません。アメリカが近いためグローバル経済に巻き込まれ、これまで築き上げた北欧型の福祉社会が壊れる恐れもあります。
 経済難民を大量に引き受けた結果、その中には仕事にありつけない人や犯罪者もいて、治安が悪くなっています。僕がコスタリカに初めて入った1984年に は、警官はこん棒しか持っていませんでした。当時、周囲の他の国では拳銃どころか自動小銃を持っていました。そのくらいコスタリカは治安が良かったので す。しかし、今や警官が銃を持つようになりました。
 コスタリカを初めて訪れた日本人の中に、それを見て「コスタリカは治安が悪い」と決めつける人がいます。周囲の他の国に行ってみてください。コスタリカ の治安が格段に良いことを知るでしょう。犯罪が増えるのを承知で大量の難民を引き受けているこの国の政策を知れば、頭が下がるでしょう。
 コスタリカで麻薬犯罪があると悪口を言う人がいます。中南米の麻薬は主にコカインで南米コロンビアからアメリカに運ばれています。コスタリカは途中の運 搬ルートに当たるのでマフィアも暗躍します。それをもって麻薬天国というのは、一部の日本人が覚せい剤をしているのを指して日本人みんなが覚せい剤に汚染 されているというようなものです。
 コスタリカの沖合を南米からの密輸船が通ります。これを取り締まるアメリカの沿岸警備隊がコスタリカの港に入ります。水や食料の補給のためです。そのた めにコスタリカとアメリカが協定を結びました。これをもってコスタリカはアメリカの軍隊に基地を貸しているというウソを流す人がいます。米軍基地なんてコ スタリカにありませんよ。
 素晴らしい国があるというと、すぐに否定したがるのが日本人の悪い癖です。自分のところが一番だと信じたいのでしょう。日本が一番で途上国はすべてダメな国だと否定する向きもあります。そのような思考に発展性はありません。
 経済大国と言いますが、私たちは幸せだと胸を張って言えるでしょうか。差別があり、いじめがあり、貧困層が増え、生きるのに辛いのが今の日本ではありませんか。もっと良い国があれば模範にして、日本をさらに良い国にすればいいではありませんか。
 日本人には独創性の才能はあまりないけれど、他の良いものを真似てもっと良いものにする能力があります。スイスの時計を改良して世界一の時計を、ドイツ のカメラを真似てさらに優れたカメラを、アメリカの車からそれ以上の自動車を世界に出しました。だったら憲法でコスタリカの良い点を取り入れて、日本を世 界一の憲法国家にしようではありませんか。私たちには、できるはずです。日本を「世界一、幸せな国」にすることだって、できるはずです。
 それを保障しているのが日本国憲法です。

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