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2016.5.20⇒

『TPPを批准させてはいけない!』
~~国会決議に違反し、憲法が定めている       
 統治機構の基本構造を破壊させるのは許せない~~

2016年5月18日
池住義憲(TPP交渉差止・違憲訴訟の会 副代表)

■TPP承認案 強引に継続審議へ
 環太平洋経済連携協定(TPP)承認案とTPP締結に伴う関係法律の整備に関する法律案(関連一括法案)は、継続審議となりました。政府・与党は、当初、4月中の衆議院通過を目指していました。しかし議事運営を巡る混乱や熊本地震への対応などもあって今通常国会での成立を断念し、参院選後の臨時国会で継続審議することにしました。

 関連一括法案とは、TPPのルールに合わせて著作権の保護期間を延ばしたり、畜産農家を支援したりする計11本の法案を一括りにしたものです。今回は、関税暫定措置法、独占禁止法、特許法、商標法、畜産物価格安定法、著作権法、医薬品医療機器法、地理的表示法などが対象です。

 対する野党は、重要5項目(コメ、麦、牛・豚肉、乳製品、甘味資源作物)を関税撤廃の聖域として守り抜くことや国民への十分な情報公開と幅広い国民的議論を求めた国会決議に反すると指摘し、厳しく対応しました。決議違反が明らかになった以上、継続審議でなく廃案にすべきであると主張しました。しかし与党は押し切り、強引に継続審議扱いとしたのです。

■TPP これまでの経緯
 日本がTPP交渉に参加したのは、2013年7月。マレーシア東部コタキナバルで開催された第18回交渉会合からです。TPPの原型は、2005年7月にシンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイの4ヵ国間で締結し、翌2006年5月に発効した経済連携協定(P4または現協定という)です。

 その後2010年始めに米国が参加表明したことによって、TPPは一変しました。交渉参加国は、原加盟4ヵ国の他に米国、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシア、メキシコ、カナダが加わり、そして日本が最後に加わって計12ヵ国へと拡大しました。対象分野も農畜産物や工業製品等の関税撤廃だけでなく、金融、投資、保険、医療、労働、知的財産権、政府調達(公共事業等)などに関連する事項や制度も含み、市民生活のほぼ全分野にわたります。

 日本を含む交渉参加12ヵ国は、2015年10月5日、米国ジョージア州アトランタで大筋合意したことを発表しました。そして翌2016年2月4日、ニュージーランド北部オークランドにおいて、徹底した秘密交渉で進めてきたTPP協定書に交渉参加12ヵ国の閣僚が署名したのです。しかし日本にとって、署名されたTPP協定の内容は、国権の最高機関であり国の唯一の立法機関である国会が行った国会決議に違反するものです。

■国会決議は 何を求めたのか
 国会決議とは、2013年4月、衆参両院の農林水産委員会でTPP協定交渉参加に関してなされたものです。その二ヵ月前の2013年2月、安倍首相は、日米首脳会談共同声明で「聖域なき関税撤廃が前提ではない」旨を確認したとして、TPP協定交渉への参加を決断。しかしそもそもTPPは、原則として関税を全て撤廃するとしており、日本の農林水産業や農山漁村に深刻な打撃を与えるものです。食料自給率の低下や地域経済・社会の崩壊を招きます。食の安全・安心が脅かされるなど私たち市民生活に深刻な影響を与え、また景観を保ち国土を保全する多面的機能も維持できなくなる恐れがあります。

 そうした認識を持った国会は、そのように多大な影響を及ぼすTPPに対して、国民(憲法が保障する基本的人権の享有主体として認められた全ての個人、以下同じ)の合意が形成されていないこと、また日本には守り抜くべき国益が存在することなどから、TPP協定交渉参加に当たって8項目の実現を政府に求める決議をしました。

■国会決議ほぼすべてに 違反している
 署名されたTPP協定書の内容はどうでしょうか。協定書内容は、国会決議8項目ほとんどすべての項にわたって違反するものです。市場アクセス分野をみると、コメに関しては、米国と豪州に対して新たに7万8400トンの輸入枠を与える。砂糖に関しては、精製用原料糖の関税を無税とする。牛肉・豚肉の関税は、大幅引き下げ。重要5項目のうち約3割にあたる174品目で関税を撤廃し、コメの関税ゼロ「特別輸入枠」まで新設。わずかに残った関税も、発効7年後には米国など5ヵ国の要求に基づいて撤廃に向けた協議を行う、となっています。関税ゼロへむけたレールが着実に敷かれているのです。

 これは、国会決議第1項「米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物などの農林水産物の重要品目について、引き続き再生産可能となるよう除外又は再協議の対象とすること。十年を超える期間をかけた段階的な関税撤廃も含め認めないこと」に違反しています。国会決議第6項では、もし重要5項目が確保できないと判断した場合は「脱退も辞さないものとすること」としているのです。

 市場アクセス以外の分野では、「合理性」「客観性」「公平性」「透明性」といった言葉を隠れ蓑にして、医療、食の安全、雇用、教育、公共事業や知的財産権などの領域で国民の利益を守ることが困難になる制度導入を可能にする取り決めがなされています。食の安全に関してだけを見ても、「残留農薬・食品添加物の基準、遺伝子組換え食品の表示義務、遺伝子組換え種子の規制、輸入原材料の原産地表示、BSEに係る牛肉の輸入措置等において、食の安全・安心及び食料の安定生産を損なわないこと」とした国会決議第2項に違反しています。

 その他にも、投資家が国を仲裁にかける投資家対国家紛争解決(ISDS)条項も国会決議が求めた濫訴防止の工夫がなされているとは言い難いことなど、主権を制約し司法権を侵害する恐れが十分にあるのです。

 こうした国会決議違反は、行政府(安倍内閣)の立法府(国会)軽視、否定です。民主主義と三権分立という日本国憲法の基本原則が、蔑ろにされています。憲法が定めている統治機構の基本構造そのものが破壊されてしまうのです。

■徹底した秘密主義で交渉は進められた
 TPP署名に至る交渉は、甘利明・前経済再生担当相(あっせん利得疑惑で本年1月28日辞任、その後は国会欠席)と外務官僚の鶴岡公二主席交渉官(本年4月より駐英大使として転出)があたってきました。交渉中は「外交上の約束」を理由に、内容は明らかにされませんでした。2015年10月に大筋合意した後も概要などを小出しにするだけで、交渉経過も協定全体像も明らかしてきませんでした。

 2013年7月、日本政府が交渉参加をする際、政府は他の11ヵ国に対して「秘密保持契約」にサインしました。政府はこの秘密保持契約の中身自体も秘密であるとして、それすらもまだ明らかにしていません。しかしニュージーランド政府は、すでにこの契約書の「ひな形」をウェブサイトに公開しています。それによればTPP交渉の経緯は、「発効後4年間秘密」とされています。協定文では抽象的でわからないことが多い中で、その意味を読み取れる交渉経緯が4年間も秘密にされれば、私たちはTPPの全体像と真実を知ることはできません。

 国民の安全や生命、健康を守る暮らしの仕組み全体に大きく影響を及ぼすTPPの内容は、国民にはほとんど知らされずに交渉だけが進められてきました。憲法上保障されている私たちの「知る権利」は、侵害され続けているのです。安全保障を理由にして、外交・防衛などの情報を秘密にした特定秘密保護法と同じことが、ここでも繰り返されているのです。

■“黒塗り”資料、これで国会審議ができるのか
 一言でいえば、“黒塗り”国会審議と言える、いやそう呼ぶべき国会審議でした。TPP承認案と関連一括法案の国会審議が始まったのは、2016年4月7日、衆院特別委員会(西川公也委員長)においてでした。
総括審議開始に際し、野党委員はTPP交渉を担当した甘利明・前経済通産大臣とフロマン米国通商代表との交渉記録文書を提出するよう求めました。政府側は、関係国との閣僚間会議議事録は公文書として作成していないと説明。その一方で政府は、交渉前後に論点を整理した文書の存在は認め、国会審議開始直前になってその資料を提示しました。

 しかし提示された45ページの資料は、タイトルと日付以外、すべて黒塗り。すでに交渉を終えて署名したものであるにも拘らず、政府は黒塗りの理由を「他国との交渉上、不利益を受ける恐れがある」と説明しているのです。

 特別委員会総括審議2日目の4月8日、野党委員は交渉経過の情報開示を巡って政府に厳しく質問。対して石原伸晃経済再生担当相は、「秘密保持契約」「外交上の約束」を理由に一切答えない。安倍首相も「交渉結果がすべてだ」「交渉結果をみればいい」「経緯を説明、公表している国はない」と繰り返すだけ。国会と国民は政府による交渉の結果を黙って受け入れよと言わんばかり。不誠実極まりない答弁・対応に終始しました。

 2012年12月衆院選時に自民党が公約として掲げた「ウソつかない。TPP断固反対。ブレない」のポスター、その後の安倍首相の「聖域なき関税撤廃を前提とするTPPは反対する」発言は、何処にいったのでしょうか。何だったんでしょうか。

 特別委員会は、公平・公正な委員会運営をすべき西川公也委員長のやり方やまた西川執筆本校正刷り問題なども加わって、野党委員は強く反発し、退席。委員会は5時間半以上にわたって中断しました。西川委員長は、野党各党の合意のないまま強引に委員会再開を強行しましたが、以後、国会審議はストップしたままの状態が続いています。

 なぜ結果(TPP協定文)だけでなく、過程(交渉記録文書)が大切で必要なのか。それは、TPP協定文は膨大且つ抽象的部分が多く、どのようにでも理解される文言が多いからです。各国が協定内容の実施プロセスでどのようにもできる要素が多いからです。だからこそ、なぜそうなったのかという交渉経緯を知ることが、国会でのTPP審議と今後の国内対策を考える上で欠かせないのです。

 政府側が国会審議に必要な情報を提出せず、無為な審議時間をただただ積み重ねようとする行為は、国会軽視そのものです。議会制民主主義と三権分立という日本国憲法の基本原則が、ここでも蔑ろにされています。

■批准とは内容に拘束されることを同意すること
 TPP発効の条件は、参加12ヵ国すべてが2年以内に議会の承認など国内手続きを終える(批准する)ことです。2年以内に手続きを終えることができなかった場合は、12ヵ国のGDP(国内総生産)の85%以上を占める少なくとも6ヵ国が手続きを終えれば、その時点から60日後に発効します。日本のGDPは17.7%、米国60.4%です。日米2ヵ国だけで加盟国の全体の78%に達するため、実質的には日米2ヵ国の他にGDPが比較的大きな4ヵ国が手続き終えればTPPを発効することができる、という仕組みです。

 しかし米国は、現在行われている米大統領選の動きおよび米国議会の状況からみて、本年2月に署名した内容のままで批准する可能性はありません。米国にとって残されている選択肢は、TPPの再交渉です。これを米国主導で行って内容を改定すれば、米国議会は賛成に回って批准する可能性が出てきます。

 日本は、7月参院選後の臨時国会で、継続審議扱いとしている「TPP承認案」と「TPP関連一括法案」の審議再開を行う方針です。安倍政権は、すでにTPP批准を前提にして、外国人の単純労働者の受け入れを可能にする国家戦略特区法改正、労働者を使い捨てにすることを可能にする派遣法改正、外資による病院経営を可能にする医療法改正などを先行して推進しています。参院選の結果にもよりますが、8月以降の臨時国会でTPP批准を強行しようと目論んでいます。

 批准とは、日本がその条約の内容に拘束されることを同意することです。その手続きは、①全権代表によって署名した条約を承認する法案を閣議決定する、②国会に提出し、国会の承認を得る、③天皇による認証と公布、以上をもって批准完了となります。これを済ませれば、締約国間での法的な権利義務関係が発生することになります。

 条約の批准は、建前上、国会両院の議決による承認です。しかし、衆議院が批准案を可決した条約について参議院が否決し両院協議会で成案が得られなかった場合、および参議院に送付されてから30日間議決が行われなかった場合は、衆議院の議決が国会の議決となり批准が承認されます(衆議院の優越)。即ち実質的には衆議院が可決すれば、批准は成立することになります。

■私はTPP批准に反対する
 TPPが発効すると、農業、食の安全、医療、環境、金融、労働、政府調達など広範な分野で、関税の撤廃、非関税障壁の撤廃が進みます。国民生活のほぼ全分野にわたって広範な暮らしといのち、健康を守る制度が解体されます。

 TPPは国民生活のほぼ全分野にわたる広範な条約体系なので、締結によって国会は膨大な法令の改廃義務をさらに負うことになります。逆もどりはできません。一内閣が一条約を締結することによって、国会に対して広範で包括的な立法上の制約を負わせることになっています。これは、「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である」と規定する憲法第41条違反です。

 私は主権者として国会決議に反し、国会・国民を軽視する憲法違反のTPP批准に反対します。

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