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2017.12.25⇒

『2017年衆院選をテレビはどう伝えたか』
~在名古屋5局の夕方ワイド番組モニター報告~

2017年12月22日
NHKを考える東海の会

 「NHKを考える東海の会」(以下、東海の会)は、昨年の参院選に続いて、2017年10月衆院総選挙の在名テレビ5局の選挙報道(ローカル向け放送)をモニターした。
 対象としたのは、公示日の10月10日から10月20日までの夕方のローカルワイド番組。NHK「ほっとイブニング」(18時10分~19時)、東海テレビ「One」(16時42分~19時)、CBC「イッポウ」(16時52分~19時)、メーテレ「UP!」(16時48分~19時)、中京テレビ「キャッチ」(15時50分~19時)である。
民放各社の放送時間は長短まちまちだが、コマーシャルや全国向け放送を除くと、ローカル放送の持ち時間は、NHKの50分間とほぼ同じである。
各局2名ずつ、計10人が分担し、テレビと向き合った。放送時間と項目・内容を秒単位で忠実に客観的に記録することを第一としたため、録画を何度も見直すなどリアルの放送時間の何倍もの時間を要した。その成果を一覧にしたのが、「2017年衆院選 在名テレビ局モニター 日にち別一覧表」資料①である。
さらに、モニターの過程で担当者が感じたことがあれば別の欄に一言書き添えることとした。その感想・意見のいくつかを取り入れて、放送内容とともに一覧にしたのが、「2017年衆院選モニター 局別(コメント付き)一覧表」資料②である。
国政選挙については、当然のことながら、全国放送として多くの報道・情報が放送される。対象のローカルワイド番組の時間帯でも、民放各局では全国向け・ローカル向けが混在していたが、モニターしたのは、あくまでもローカル向けの報道・情報に限定した。中にはローカル局で枠づけのみをし、内容はキー局または他の局制作の全国向け、というのがあったが、内容で判断し、モニターの対象からは除外した。

 東海の会は、昨年の参院選モニターを踏まえて、「衆議院解散総選挙の報道についての要請書」を在名5局にあらかじめ(2017年9月28日付)出しておいた。要請の要点は次の5点であった。
① 「放送に携わる者の職責」を確認し、そのためのシステムを再検討、再構築する
② 重要な問題・テーマについては独自の企画・取材を行い、解析して報道する
③ 政権与党による“争点隠し”に加担しない
④ 報道放送時間を十分にとる
⑤ 選挙期間中は無報道日をつくらない
 モニターの分析にあたって、この5点に照らして、各局の放送がどうだったかをひとつの目安とした。そしてもう一つの目安としたのは、今年(2017年)2月に出された放送倫理・番組向上機構(BPO)の『2016年の選挙をめぐるテレビ放送についての意見』、とりわけその中の「Ⅳ選挙に関する豊かな放送のために」であった。
 BPOはその結論として、「2017年もまた、有権者に日本の将来を決定づける重要な選択を迫る選挙が予想される。憲法が保障する表現の自由、番組編集の自由を存分に活用し、放送局の創意工夫によって、量においても質においても豊かな選挙に関する報道と評論がなされるよう期待したい。」と、今回の衆議院解散・総選挙を予想し、各放送局に「期待」をしていたのであった。

 以下、今回衆院総選挙の在名テレビ5局の選挙報道(ローカル向け放送)モニターを、8点にまとめて報告する。

1.無報道日は無かった
今回モニターした9日間は、すべての放送局が基本的に毎日欠かすことなく、選挙報道をした。「無報道日」は無かった(10月11日、中京テレビはローカル向け放送をしなかったが、全国放送として愛知7区を報道したので「基本的に毎日」とした)。
これは、私たちの「要請⑤」にかなうものであった。昨年参院選の時は、すべての局に無報道日があったり、延べ6日間も選挙報道をしない放送局があったりしたのとは大きな違いである。衆参の性格・選挙期間の差異などもあり単純比較はできないものの、一つの前進ととらえたい。

2.一日当たりの放送時間は増えたがまだ不十分
ローカル向けの総放送時間は、9日間で5局合計525分25秒(一日当たり58分24秒、1局平均11分41秒)であった。先の参院選では、14日間で590分21秒(一日当たり42分10秒、1局平均8分26秒)であった。選挙期間が短い今回の衆院選では、一日当たりの放送時間は5局合計で、16分14秒(1局当たり平均5分15秒)増えた。
一日当たりの放送時間が増えたことは評価できる。しかし、私たちの「要請⑤報道放送時間を十分とる」という点からみると、まだまだ不十分である。総放送時間は参院選に比べて減っているし、一局一日平均、わずか11分41秒しか放送していない。
「国民に選挙の意義を訴えて関心を呼び覚まし、さらに国民の選択を実のあるものとするために」「量においても質においても豊かな選挙に関する報道と評論がなされるよう期待したい」というBPOの指摘に関して、量的にみて十分応えているとは言えない。
NHKは、総放送時間が87分20秒と、先の参院選と同様に5局の中で最も少なかった。しかも、ほぼ毎日放送した選挙制度などを解説する「お知らせ」のような「選挙一口メモ」を差し引くと、76分05秒(一日平均7分17秒)で、民放各社と比べて量的見劣りが目立つ。
 NHK以外の民放では、CBCが122分44秒(一日平均13分08秒)、東海テレビ108分(一日平均12分02秒)、メーテ106分03秒(一日平均11分47秒)、中京テレビ100分54秒(一日平均11分13秒)であった。

3.選挙区情報と制度説明が大半だったNHK
一日当たりの放送時間は量的に若干増えたが、その内容をみると「候補者・選挙区の情勢報道」が大部分であった。NHKは63分17秒(放送時間全体の72%)で、「一口メモ」を除くと実に84%が「注目の選挙区」などの情勢報告であった。「選挙一口メモは制度説明だけ。注目の選挙区も、候補者の演説風景のみ」、「公示日から放送最終日までみて、候補者の選挙活動を追うのと選挙制度の説明が大半」などと、モニター担当者がコメントで嘆かざるをえない状態であった。
民放各局の候補者・選挙区状況の放送は、多い順に、CBCが58%、メーテレ50%、東海テレビ37%、中京テレビ30%であった。「広く、浅い」とか「『不倫』で『目を白黒』」、「各候補者の時間配分は均等だが政策や候補者の人柄、これまでの対立法案への態度などにもっと時間を割くべき」、「有権者に有効な判断材料を提供しえたのだろうか」などといったモニター担当者のコメントが端的に示していた。

4.地域的に偏在した選挙区報道
選挙公示日を除いてNHKが「注目の選挙区」で取り上げたのは、愛知1区、3区、4区、7区、10区、12区、岐阜4区、三重2区の7選挙区であった。東海3県24選挙区中、7選挙区のみであった。CBCは、愛知5区、7区、10区、12区、岐阜4区、三重2区の計6選挙区。メーテレは、愛知1区、5区、7区、岐阜4区、三重2区の計5選挙区。東海テレビは、愛知1区、7区、三重2区の計3選挙区のみ。中京テレビは、愛知7区の1選挙区のみであった。
5局すべてに取り上げられたのは、愛知7区。4局共通は、愛知1区と三重2区。3局共通は、愛知1区と岐阜4区。2局共通が、愛知5区、10区、12区であった。
東海三県24の選挙区のうち1局だけでも取り上げられた選挙区を合計しても、8選挙区に過ぎない。他の16選挙区はいずれの放送局にも取り上げられていない。16の選挙区の有権者は、結果的に「置いてきぼり」にされてしまったことになる。逆に、愛知7区だけが5局すべての局に取り上げられた。こうした報道は情報の地域偏在に拍車をかけ、「選挙活動を追う取材は注目選挙区のみで、他は無視されているが、それでよいのか」「知名度の高い候補者・赤松・野田・山尾などが出る選挙区が注目選挙区として、特別に時間をとってワイドショー的に扱われるのは適切か?」などのコメントを生むことになった。

5.与党自民党が中心となった選挙報道
「注目区」「激戦区」で取り上げられた候補者を政党別に累計すると、自民22、無所属11、希望9、共産7、立民6、維新2、社民0、幸福0であった。自民党は他政党の2倍以上の情報がテレビで報道され、比例区にも1票を持つ有権者に党の政策をアピールするチャンスを圧倒的に多く得たことになった。
立憲民主党は、東海3県で3人の候補者を立て、延べ6回放送された。維新の党も1人で2回、無所属は8人の候補で11回であった。希望の党は16人の候補者で9回、共産党は17人で7回。社民党は1人、幸福実現党は2人の候補をそれぞれ立てたが、放送の機会はなかった。
総じて与党自民党中心の選挙報道であったということができる。こうした今回の選挙報道は、「三つ巴の選挙区リポートで、共産党を含む市民連合の動きが伝えられない」とか「愛知3区に絞ったため、3党の主張のみ」などのコメントにあるとおり、結果的に自民党の「政策や動き」を有権者に強く印象付けることとなったのではないか。

6.独自取材、独自企画のなかったNHK
NHKは、独自企画・リポートを全く放送しなかった。参院選の時と同じであり、私たちの「要請②重要な問題・テーマについては独自の企画・取材を行い、解析して報道する」に相反するものであり、看過できない。「争点に関する3県の状況をルポしたものは無かった」、「選挙の争点や生活にかかわる独自取材はほとんどなかった」などと、モニター担当者のコメントも手厳しい。
先述したように、BPOは「経済・福祉・教育などの内政政策、外交政策、憲法改正に対する方針など選挙が実施される背景にある重要な争点について、本来有権者が判断すべき争点がどこにあるのかを明確にし」、「放送局の創意工夫によって、量においても質においても豊かな選挙に関する報道と評論がなされるよう期待したい」と呼びかけていたことを想起すべきである。
民放では、メーテレが6回(36分42秒)と一番多い。(すべて「衆院選『ヒトコト言いたいがね』」のシリーズで、いわゆる「リポート」は放送していないので、調査報道というカテゴリーで分類すれば、ゼロともいえる)。次いで、中京テレビの5回(30分35秒)。(「一票の現場」のシリーズで、すべて「リポート」)。続いて東海テレビの3回(25分01秒)。一番少ないのがCBCだが、それでも3回(22分34秒)放送している。
11月9日付毎日新聞は、NHKと在東京5局の衆院選に関するテレビ放送を分析して、「放送時間は増えたが争点『深堀りなし』」、「調査報道が姿消し、耳目引く話題中心」と、報じた。「現場の実情の取材や、政策の実現可能性を検証するなどの深堀りはほとんど見られなかった」と述べている。
全国放送に対するこの指摘は、私たちがモニターした在名古屋テレビ局のローカル向け放送にも、おおむねあてはまる。「相変わらず候補者の訴えはスローガンが多く、有権者の理解が進むのか。工夫が必要だ」「ニュース番組の選挙報道は表面的なものがほとんど、国民が知りたいことにもっと切り込め」と、担当者のコメントは厳しい。

7.評価できる民放の独自取材選挙報道
 そうした中で、中京テレビの「一票の現場」は、まさに「現場の実情」をリポートするシリーズであった。テーマは、「保育」、「働くママ」、「景気」、「就学支援」、「志摩の18歳」。「投票の際、最も重視する政策」について、NHKの世論調査では「社会保障」が29%と飛びぬけて高く、次いで「経済政策」が18%となっており、視聴者・有権者に判断材料を提供するテーマ設定も適切であった。「保育士など当事者の声や実態をよくリポートしていた」、「連日の『一票の現場』は、現実を浮き彫りにする好リポート」など、モニター担当者から好意的な感想が寄せられていた。
 延べ6日間にわたって放送されたメーテレの「衆院選『ヒトコト言いたいがね!』」も、有権者の声を幅広く紹介し、「有権者に多様な立場からの多様な見方を提示する」シリーズであった。このシリーズ中の10月19日放送「『50人に聞いた』は、投票の判断基準が①候補者か②政党か③政策かを問うもので、今回の選挙報道では最も出来の良いものだった。拍手を送りたい」と絶賛するモニター担当者のコメントがあった。
 東海テレビ10月18日放送の「ニュースの教科書」は、9分余りの企画で、「選挙の公約」をテーマに「ものスゴく細かいトコまで各党の意外な公約」を見てみようと呼びかけた。「スタジオ解説とは言え、公約をいろいろな視点から読んでみると面白そうと思わせる」とのモニター担当者のコメントにあるように、選挙に対する視野を広げるものであった。
 CBCはリポートを3回放送しており、「現場の実情」を伝えるものとしては、中京テレビに次いで多かった。「子ども食堂などの現場」や「生活、仕事の現場からの報告」を示し、「よく考えて投票をとキャスターが締めくくった」とコメントでも触れている。

8.おわりに
放送法は、第一条で「放送に携わる者の職責を明らかにすることによって放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること」を求めている。折しも、この12月6日に出されたNHK受信料訴訟の最高裁判決の中でも、「放送は(略)国民の知る権利を充足し、健全な民主主義の発達に寄与するもの」と再確認されている。「各候補に、分かり易い切り口で問いただす政策的な掘り下げが公示日から最終放送日の本日まで皆無に近かった」とモニター担当者のコメントに書かれているように、民主主義の根幹ともいうべき国政選挙において、多様な判断材料を在名テレビ局は、提供できたであろうか?
総じてNHKは、放送時間量が短かかった(CBCの約7割)うえ、放送内容のほとんどが「選挙区情報」で、BPOが「期待した」「放送局の創意工夫によって」の「豊かな選挙に関する報道」や「挑戦的な番組」からほど遠いものであった。
民放各局には、それぞれいくつかの企画・調査報道に光るものがあったし、いずれの放送局もNHKより選挙に関する放送時間が長かった。とはいえ「量においても質においても豊かな選挙に関する報道と評論」というBPOの「期待」に応えているとは言い難い。

突然の解散、希望の党の設立、民進党の分裂、市民と野党4党の統一崩れ等々前代未聞の「政治上の大事件」が「同時多発」した今回の衆院選。報道するテレビ局も、大忙しで、大変だったであろう。
だからこそBPOは、「いまこそ放送に携わる一人ひとりが、国民に選挙の意義を訴えて関心を呼び覚まし、さらに国民の選択を実のあるものとするために、臆することなく放送することが求められているのである」と指摘した。そしてさらに、「選挙を通じて国民の意思を表明するという民主主義の過程を活かすために、放送現場のジャーナリストに求められる職責であり使命である」とも言っている。私たち「東海の会」がかねてより要請している「『放送に携わる者の職責』を確認し、そのためのシステムを再検討、再構築する」ことは、まさに常日頃から必要とされていることなのである。

以上

(文責:高野春廣、本会運営委員)

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